健康な人の血液は無菌ですが、たとえば歯周病になるとブラッシングや咀嚼運動によってできた傷口から細菌が血液中に侵入し、菌血症(血液中から生きた細菌が検出されること)を生じます。
さらに高齢者や免疫不全の方では菌血症から敗血症(血液中で細菌が増殖する状態)に移行します。
また心不全などで心臓の動きが不規則になったり、心臓に人口弁が装着されている場合は、心臓内の血液に渦巻きができてそこに口腔細菌が溜まり、心内膜炎となります。
また嚥下反射や咳反射が低下している高齢者では、口腔細菌を含む唾液などを知らず知らずのうちに誤嚥することがあり、こうして口腔細菌が肺で定着し肺炎を起こすことがあるので、口腔ケアをしましょう。

経管栄養、経腸栄養などを行っていいる場合、口から食物をとっていないので口腔内は汚れておらず、口腔ケアは不必要だと誤解されがちです。
しかし、皮膚に垢がたまっていくように食事をしていなくても口腔内に口腔粘膜の老廃物や痰などがたまっているのです。また、唾液分泌が低下し、唾液による洗い流しが少なくなるため、口腔内細菌がかえって増殖する場合もあります。
そのため経口摂取の人よりも経管栄養の人のほうが誤嚥性肺炎になりやすいと言われています。
経口摂取していない人ほど、実は口腔ケアは必要なのです。最低1日1回は口腔ケアを行いましょう。